
シール・ラベルの文字はどれくらい小さく印刷できるか

本、チラシ、ポスターなど、版面が大きく、レイアウトに様々な余地がある場合、文字のサイズは読みやすさ、強調したい部分、補足など、用途に応じて自由度を持って変化させられます。一方、シールやラベルの場合、版面が小さい中に、多くの文字を印刷しなければならないケースが多々あります。
シール・ラベル印刷の文字の世界
シール、ラベルにおいて、食品やお酒の成分表示ラベルなどでは、限られた小さな面積の中に原材料、注意書き、会社名、住所などなど、非常にたくさんの文字情報や、リサイクルマーク、バーコードなどのマークや図柄を入れる必要があります。また、それらは、文字サイズ何ポイントで作成するといったルールがある場合があります。
家電や機械の警告表示ラベルなどでは、限られた小さなスペース内に、注意喚起の文章、取り扱いの図解イラストなどを入れる必要があり、成分表示ラベル同様、スペースの制約の中でかなりの情報量をレイアウトし印刷する必要があります。
それらルールや、小さな文字で情報を表示する際のフォント(書体)選びのコツ、弊社での小さな文字の対応や品質などをお話ししていきます。
食品成分表示ラベル、日本酒ラベル、警告表示ラベルなどの文字ルール
食品成分表示ラベルや警告表示のラベルでは、文字のポイント数が原則で8ポイント以上、表示可能面積が150㎠以下の場合、5.5ポイントまで文字を小さくすることが可能です。警告ラベルも同様に、文字サイズは8ポイント以上が求められ、表示可能面積が150㎠以下の場合は、5.5ポイントまで小さくできます。この表示可能面積とは、ラベルの面積ではなく、ラベルの貼り付けが可能な部分の面積となりますので、判断の際には注意が必要です。
化粧品の表示は、文字の大きさは7ポイント、表示が困難な場合は4.5ポイントまで小さくでき、容器のサイズによっては小型なものでは特段規定を設けてはいません。
お酒のラベルでは、文字のサイズは原則8ポイント以上、表示項目によって、この部分は何ポイント以上などとさらに細かい指定が入り、書体は原則「楷書体」か「ゴシック体」を使用するようにと指定が入ります。
文庫本の一般的な文字サイズがおおよそ9ポイントですので、活字に慣れていない方からすると、8ポイントはやや小さめな印象かと思います。
小さな文字のフォント(書体)選び方

書体には様々な分類があります。一般的なものでいうと、ゴシック系と明朝系があります。
ゴシック系フォントとは
ゴシック系とは、ほぼ均一の線でデザインされた、角ばった感じの書体の系統のことで、Windowsパソコンに搭載されているフォントで言うとMSゴシックのようなデザインのフォントとなります。メイリオもゴシック系のフォントですが、よりポップな感じです。
明朝系フォントとは
明朝系とは、太い線、細い線、筆の入り、とめ、はらいなどの文字の強弱が表現されたデザインで、Windowsパソコン搭載フォントのMS明朝のようなより和っぽい感じの系統です。文庫本や新聞の本文などでよく使用されます
より小さな文字を印刷する場合、ゴシック体がおすすめです
では、より小さな文字で使うフォントは、ゴシック、明朝のどちらが良いでしょうか。
小さな文字の印刷に使うフォントとしては、ゴシックをおすすめします。
ゴシック体は、ほぼ均一幅の線で文字がデザインされているのに対して、明朝体は細い線や太い線が組み合わさっており、線の入りや終わり部分が跳ねたようになったヒゲと呼ばれる突起があり、はらいやとめの部分も太さの強弱がつけられています。明朝体の線の強弱は、普通の文字サイズでは目に優しく、可読性をあげてくれますが、文字が小さくなればなるほど、線の強弱がちらつきの原因となり、可読性を下げる傾向にあります。逆に、ゴシック体は、ほぼ均一の太さの線で構成された文字なので、文字が小さくなっても、ちらつきにくく、明朝体よりも可読性を維持できる傾向にあります。
ゴシック体にも様々なデザインがあります

ひとくちにゴシック体と言っても、先にゴシック「系」とお伝えしたように様々なデザインがあります。
一般的なゴシック体は、文章の本文などの長めの文章に使っても読みやすい(可読性が高い)フォルムです。
新ゴシックやメイリオといった、若干ポップな印象のフォントは、可視性が高く(注意を引きやすい)、見出しやキャッチコピーなど目立たせたい部分に使用すると効果的です。
POP書体のようなデザインフォント系のゴシック体は、書体の名前が表すように、POPの作成に適したフォントです。極端なフォントですので、使い方によっては洗練さが失われてしまいます。
では、成分表示ラベルで使用するのにおすすめなのはどのフォントかというと、一般的なゴシックになります。
一般的なゴシックとメイリオのようなフォントでの見え方比較

成分表示用ラベルで一般的な、当たり前なゴシック体を使用した方が良い理由として、以下のようなことが挙げられます。
読みやすさ
一般的なゴシック体は1文字分のスペースの中にある程度空き(余裕)を持たせた、読みやすさを重視したフォントデザインであるのに対して、メイリオ、POP書体などのようなフォントは、1文字分のスペースを目一杯使ったような、目を引くことを重視したフォントデザインです。そのためある程度長い文章では、一般的なデザインのゴシック体の方が読みやすく、疲れない傾向にあります。
フォントデザインと印刷面積による適正
成分表示ラベルなどは、限られた面積内に、比較的多めの情報量を詰め込む必要があります。結果、文字間や行間を極限まで狭くせざるを得なくなる場合が多いです。そうなると、長い文を読ませることを前提としないフォントデザインでは、文字の密集感が非常に高くなり、読み辛く、目が疲れてしまいます。なるべく読みやすくするためには、一般的なゴシック体が圧倒的に適しています。
成分表示ラベルは、商品正面のラベルのようにグラフィカルなデザイン性は求められず、読みやすさや、限られたスペースにいかに綺麗に情報が収まっているかといった、別方向のデザイン性が求められます。ですので、きをてらう必要もなく、いかに堅実なレイアウトができているかが大切になります。
シール・ラベル印刷の観点から見る小さな文字のフォント選び
印刷には、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凸版印刷などさまざまな方式があります。印刷方式の違いについては、こちらの記事で詳しく説明しております。
シール・ラベル印刷は主に凸版印刷方式で印刷されます。
凸版印刷とは

樹脂凸版と呼ばれる凹凸のある版を用いて印刷する方式です。樹脂凸版の出っ張った部分にインクを付け、ラベル原紙に「押し付け」圧をかけてインクを転着させることによって文字や絵柄を印刷します。シャチハタなどのスタンプをイメージしていただけると印刷原理をよりご理解いただけます。
凸版印刷で起こる特徴的現象「マージナル」

このように「印刷版に圧をかけ」て「押し付ける」という作業にともない、凸版印刷では「マージナル」と呼ばれるものがどうしても発生してしまいます。
マージナルとは、凸版を押し付ける圧力によって、凸版の出っ張った部分の周りにインクが押し出され、隈取のような縁ができる現象です。人の目ではほとんど気にならない現象ですが、これによって「文字が太る」という現象が起こっていることになります。この太る現象があまりにひどい場合、線と線の間がマージナルで埋まってしまう「つぶれ」という現象につながります。これは、印刷時にかける圧力の調整により回避できる場合もありますが、フォントデザインによっては印刷時の調整では対処できない場合もあります。その場合、印刷特性を考慮したフォント選びが必要となってきます。
印刷特性を考慮した小さな文字のフォント選び

フォントにはウェイトと言って、1つのフォントで細いものから太いものまでの太さの種類があるものがあります。小さな文字の場合、太くした方が読みやすい(見えやすい)のではと考えてしまいますが、小さな文字は、太さが太くなればなるほど、文字ではなく黒いかたまりとして認識されてしまう傾向が強くなり、逆に読みづらくなります。
また、凸版印刷の特性(マージナル)により、印刷された文字は若干太る(最悪の場合、つぶれによって文字の隙間が埋まってしまう)ということも考慮すると、太めのウェイトではなく、標準の太さのフォントを選ぶのが適切と考えられます。文字のサイズによっては、標準より細めのウェイトを選択した方が良い場合もあるかもしれません。
成分表示などのラベルには一般的な太さの一般的なゴシック体が最適
フォントのデザイン特性、凸版印刷の特性を考慮すると、成分表示ラベルで使用する、小さいサイズの文字のフォントには、変な工夫を入れず、普通のゴシック体フォントを選ぶのがベストです。
表示ラベルのデザインは、用途に求められる本質をしっかり意識して
成分表示ラベルにもデザイン性をつけたいとの思いから、新ゴなどのルックに特徴があるフォントを選びたくなってしまう場合もありますが、逆に読みづらく、結果、悪いデザインになりかねません。そのようなフォントを使う場合、UDフォントなど、視認性が考慮されたものを選ぶと良いでしょう。
表示ラベルのデザインとは、かっこよさではなく、堅実さ、実用。しっかりとしたレイアウト設計、小さな文字を詰め込みながら、なるべく可読性を損なわないようにするフォント選びと組版への配慮に向かうべきと考えます。それが、ラベルに求められる確かな版面デザインへつながります。
凸版印刷で印刷できる小さな文字のサイズはどれくらい?
表示ラベルでよく使われる6ポイント〜8ポイント程度の文字は、日常的な製造の中で日々印刷されています。5ポイントを下回るような文字になってくると、しっかりとした印圧(凸版を原紙に押し付ける圧力)の調整やインクの硬さ調整など、より繊細な調整技術が要求されるようになります。たかが文字の印刷とお思いでしょうが、条件が厳しくなればなるほど、基本的な調整をしっかり行えるという、オペレーターの技術、経験、知識が必要となります。
越後札紙では2ポイント前後の文字をきれいに印刷できます

基本的な印刷だからこそ、印刷オペレータのしっかりした技術が求められます。
弊社では、経験豊富なオペレーターにより2ポイント前後の文字を綺麗に印刷することが可能です。1.5ポイント以下ですと、流石に「つぶれ」が出てしまいます。そもそも、そのような文字でデザインしても、相当倍率の高いルーペで見ない限り読めません。そのような文字でも、しっかり調整をし、ルーペでのぞけばちゃんと読めるように調整いたします。
小さな文字の印刷では、ラベル原紙選びにも注意が必要です
例えば、商品にはる正面側のメインのラベルを和紙で作成したので、裏側にはる表示ラベルも和紙で作って統一感を持たせたい、といったケースで、表示ラベルの文字サイズが5ポイント程度の小さな文字で構成されている場合、注意が必要です。
和紙や上質紙といった紙は、表面に凹凸があり、インクが染み込んでにじむ傾向にあります。そのような紙に小さな文字を印刷すると、インクのにじみで読みづらくなる、あるいは読めなくなる、印刷がかすれて読みづらくなる、などの不具合のリスクが高まります。この場合、アート(マット感強め)やグロス(表面がツルツルで光沢感高い)と呼ばれるような、表面の平滑度が高く、印刷適正を上げるための表面処理が施された原紙をチョイスすることをお勧めします。見た目のかっこよさで実用に支障をきたすのでは、かっこ悪い結果につながります。用途に求められる本質を見落とさないというところは、材料選びにもかかってきます。
シール、ラベルの依頼はシール、ラベル印刷製造のプロへ
文字の印刷なんて簡単でしょうと思われがちですが、条件によっては高い技術、経験、知識が必要となります。
越後札紙は、シール、ラベルの分野で、多種多様な業界のさまざまなご要望に応えるべく、経験、知識、技術を積み重ねてきたシール、ラベルのプロとして、日々製造にあたっています。
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豊富な経験と実績で、適切なご提案と高品質のラベルをお客様にお届けします。
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